遺産分割の解決事例―不動産の評価が問題となった事案―

※依頼者の方から書面による承諾を得て、解決事例を掲載しています。

(1)事例の概要

多数の不動産が存在する方の遺産分割を行った事案です。被相続人の想いを踏まえ、依頼者である相続人Aさんが不動産を全て取得する遺産分割を進めることが目標でした。

しかし、固定資産税評価額や相手方の査定額に基づく不動産評価額が預貯金や保険等の流動資産合計額を大幅に上回るため、その分割方法が問題となりました。

(2)解決内容 

本件では、不動産に関する査定書を作成・提出の上、固定資産税評価額等が現実の処分価格を大幅に上回っていることを主張すると共に、被相続人の想いを踏まえた遺産分割をするよう求めていきました。

最終的に当事者全員が理解を示し、相手方の査定額から3300万円以上減額した評価額に基づく遺産分割調停が成立し、Aさんが不動産を全て取得することができました。

(3)所   感

 遺産である不動産の価格がそれ以外の遺産の合計額を上回る場合において、当該不動産を全て取得するためには代償金を支払うことが多いといえます。この代償金を算定する上で不動産価格の評価が重要となります。

評価基準によっては代償金が数千万以上になることもあり、不動産全ての取得を断念せざるを得ない場合も出てきます。

本件では、Aさんのお姉さんが被相続人の想い等を踏まえ大きく譲歩したことから、当事者全員がそれぞれ折り合いを付けなければならないという気運が生まれたと感じます。

 親族間で争いとなる遺産分割事件は各当事者に譲れない想いがあり、極めて激しい対立が生じることが通常です。

ただ、それでもなお諸事情を冷静に考えることが解決に繋がるときもあります。時には、第三者である法律専門家等に相談することで改めて状況を整理することも有意義な場合があるといえそうです。