不動産事件の解決事例―借地契約の更新拒絶が争点となった事案―

※依頼者の方から書面による承諾を得て、解決事例を掲載しています。

(1)事例の概要

数十年以上前に締結された借地契約に関し、依頼者である貸地人のAさんから、借地人に対し、借地契約の更新拒絶の異議を出した上で、対象土地の返還を求めた事案です。

(2)解決内容 

本件は当事者間の話し合いでは解決せず、裁判所での訴訟手続により解決が図られることとなりました。

その結果、Aさん側は、法律に基づき借地上の建物を買い取り、対象土地の返還を受けました。

(3)所   感

 法律では借地人の保護が図られており、借地料不払いや無断転貸等の事情がない場合、たとえ契約期間が満了したとしても、貸地人側が借地の返還を求めることは必ずしも容易ではありません。

例えば、一般借地契約の更新を拒絶する上で、貸地人は、遅滞なく異議を述べる必要があり、かつ、その異議に正当事由が認められる必要があります。しかし、数十年におよぶ借地契約の期間満了時期を把握するのは難しく、また、正当事由について簡単には認められない傾向にあります。加えて、借地人には建物買取請求権という法律の条文も定められています。

 上記の点に関し、訴訟では複数の裁判例を調査・引用した上で、本件の具体的事実関係においては、立退料等の提供がなくとも正当事由が認められること、数か月以上経過しても異議が遅滞していない旨を主張しました。この遅滞なき異議に関し、私見では契約更新に対する当事者の信頼の有無がポイントではないかと考え、これに関連した諸事情を強調しています。

 借地・借家は当事者の生活基盤等に関わる重要問題である一方、法律において賃貸人及び賃借人の双方にとって注意すべき部分があります。

借地や借家の問題を抱えた場合、法律専門家に相談することが望ましいといえます。