交通事故の解決事例ーレッドブックによらずに車両価格を評価した事例ー

※依頼者の方から書面による承諾を得て、解決事例を掲載しています。

1)事例の概要

交通事故による損害賠償請求の事例です。こちらの自動車の初度登録が平成20年であったことから、保険会社は車両価格が14万円程度であるとして、修理費用60万円は支払えないと争いになりました。

 

2)解決内容

民事訴訟を提起した上で、修理費用60万円を賠償責任とする旨の和解が成立しました。

 

3)所感

(1)交通事故の事案においては、修理費用が車両価格を超える場合、経済的全損として評価され、事故前の車両価格の限度でしか損害賠償請求ができないとされます(最判昭和49年4月15日)。

この車両価格について、保険会社はレッドブック等を利用して評価することが一般です。

レッドブックとは有限会社オートガイド発行の『自動車価格月報』のことです。もっとも本件のような10年以上前の古い車両の場合は現時点のレッドブックに掲載されていないことがあります。

本件でも保険会社側は、レッドブックに掲載されていないことから、慣例を踏まえ、発売当時の新車価格の1割を基準にすべきと主張しました。

(2)しかし、本件で、依頼者は2年前に中古車で購入したばかりであり、そのときの売買価格は90万円を超えていました。

また、同一条件の自動車について数十台程度を調べたところ、その平均価格は80万円程度であると確認できました。

それゆえ、本件では、実務の慣例に依拠した算定は明らかに実態に沿わないケースだったといえます。

このようなケースであっても、保険会社等がレッドブックや慣例に依拠して、示談を求めることは少なくないと感じます。提案内容に疑問を感じた際には一度立ち止まって考えることも必要だと思われます。