請負工事紛争の解決事例―工事費用が問題となった事例―
※依頼者の方から書面による承諾を得て、解決事例を掲載しています。
1)事例の概要
依頼者であるA社は請負契約に基づき工事を完成させたところ、注文主であるB社との間で、請負工事に係る諸費用の負担につき争いが生じた事例です。
(2)解決内容
B社側がA社の預金口座の仮差押を行い、その後、裁判所に本訴を提起しました。そこで、被告A社側の代理人として訴訟対応しました。
争点整理・証人尋問等を経て、裁判所から和解が提案されました。そして、B社側の請求金額を約9割減額させた上で和解が成立しました。
(3)所 感
ア 本件では、A社担当者とB社担当者で諸費用の負担に関する合意が成立していたか否か等が争点となりました。
この点、A社側とB社側の証言は大きく食い違っており、B社側は、B社関係者に加え、第三者を証人として申請しました。
イ 訴訟では事実に関する当事者の主張が異なることが多く、争いがある場合、証拠でもって事実を認定することとなります。
関係者の証言もまた証拠となります。もっとも、証人の証言はあくまで記憶に基づくものであり、また、関係者間の利害関係が証言内容に強い影響を与えます。それゆえ、証言内容は直ちに信用すべきでなく、客観証拠と合致しているか、合理的な内容か等を慎重に吟味する必要があります。
本件でも、A社はB社側関係者の陳述を否定する重要証拠を保管していたため、証人尋問で、B社側証人たちは陳述していた内容を撤回しました。
ウ A社は工事の進行に応じ各種記録(写真等)を作成・保管していたため、B社側の主張・立証を争う上で充分な客観証拠があったものです。
日々の業務記録を作成することは大変ですが、いざというときに備えて継続的に作成していくことが大事といえそうです。