会社紛争の解決事例-株主が誰であるか問題となった事例-

※依頼者の方から書面による承諾を得て、解決事例を掲載しています。

(1)事例の概要

 複数人で出資して会社法人を設立したところ、数十年の期間が経過して、株主や代表者が変遷していきました。その変遷過程に曖昧な部分があったため、当該会社法人の現在の株主が誰であるか争いとなった事例です。

(2)解決内容 

当事者双方に代理人弁護士が選任され、交渉がなされた結果、当事務所の依頼者の方が唯一の株主であることを確認する旨の合意書を作成しました。

(3)所   感

 ア 株式会社において会社の所有者(オーナー)は株主です。会社法では株主が会社の基本的意思を決定する仕組みとなっており、取締役などの会社役員も株主に選ぶ権利があります。

一方で、株式は譲渡が可能であり、売買や贈与、あるいは、相続に伴う遺産分割によっても株式が移転します。そして、この株式譲渡に応じて株主も変わっていくこととなります。

イ これらの株式譲渡について記録が残っていればよいのですが、現実には株券を発行していない会社が多く、数十年も経過すると譲渡の記録も処分されています。

それでも、会社法121条に定める株主名簿が存在すれば、株主の氏名や株式数等も確認できますが、実際には、株主名簿も作成されていない場合が少なくありません。

そのため、当該会社の株主が誰であるかを明確に裏付ける資料がないという事態が生じうるものです。

ウ 上記のような直接の資料が存在しないとき、情況証拠等から株主であることの証明を進めることが考えられます。

例えば、原始定款、当時の関係者が作成した記録、法人税申告書の「同族会社等の判定に関する明細書」、株主総会議事録、その他関係者の振舞い等々の諸般の事情を考慮して株式の状況を明らかにしていくことを目指します。しかし、どうしても評価が介在するため、対立する当事者を説得することは容易ではありません。また、いわゆる『名義株』が絡んでくると事態はさらに複雑化します。

エ 当職の感覚として、正式な株主名簿が作成されていない株式会社は決して少なくないと感じます。いざ問題になる前に、一度、株主に関する資料を確認・整理することが望ましいといえそうです。