交通事故事件の解決事例―後遺障害による損害評価に争いがあった事案―

※依頼者の方から書面による承諾を得て、解決事例を掲載しています。

(1)事例の概要

横断歩道上を歩行していたAさんが、自動車と衝突した事案です。この事故でAさんには後遺障害が残存し、後遺障害等級が認定されることとなりました。

後遺障害が残存する場合、一般に、被害者は後遺障害による逸失利益という損害賠償を請求できます。しかし、保険会社がこの逸失利益等の発生を否定してきたため、民事訴訟をすることとなった事例です。

(2)解決内容

争点となったのは後遺障害の影響です。本件の事例における後遺障害については労働能力喪失率が過大評価されている旨の医学論文があり、裁判例でもその評価が分かれている傾向がありました。
そこで、訴訟を進める上では、裁判例で着目されている事実を整理しつつ、被害者の後遺障害の内容及び影響を具体的に吟味・検討することを中心とした主張・立証をしています。その中でも、主治医から確認した画像上判明する具体的な損傷度合及び今後の回復の見通し等に係る論拠が重要となりました。

当事者双方が主張・反論を尽くした結果、示談段階で保険会社側が最終提案した賠償金総額は約500万円程度であったところ、民事訴訟手続において賠償金総額1200万円で和解するに至りました。

(3)所感

本件は後遺障害がもたらす影響について評価が分かれた事案です。将来のことについて現時点で評価することは容易ではなく、本件では労働能力喪失率のほか基礎収入についても争いとなっていました。
民事訴訟は適正な損害賠償を実現する手続きであり、具体的な事実関係及び正当な論拠に基づいて判断する場です。当事者間の見解に争いがある場合には、民事訴訟手続で解決を進めることも1つの対応手段となります。

交通事故の示談を進める上で、保険会社側から提案された解決案が適正な論拠に基づくか否か、一度、立ち止まって吟味・検討することが大切な場合もあるといえそうです。